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シスジェンダーとは?ジェンダー理解を深める視点

Tags: シスジェンダー, ジェンダー, 性自認, 多様性, 基礎知識

多様性について考えるとき、私たちはしばしばジェンダーの多様性についても話題にします。多くの場合、「男性」や「女性」といった言葉で語られることが多いかもしれません。しかし、この「男性」「女性」という区分だけでは捉えきれない多様な性のあり方が存在します。

私たちが普段あまり意識しないかもしれない言葉に、「シスジェンダー」があります。この言葉を知ることは、多様なジェンダーのあり方を理解する上で、そして私たち自身のジェンダーについて考える上で、とても重要な視点を提供してくれます。

シスジェンダー(Cisgender)とは

シスジェンダーとは、出生時に割り当てられた性別と、自分の性自認が一致している状態を指す言葉です。

ここでいう「出生時に割り当てられた性別」とは、生まれた時に身体的な特徴などに基づいて医師などによって判断され、戸籍などに記載される性別を指します。「性自認」とは、自分自身がどの性別であると感じているか、という自分自身の内面にある性別の認識のことです。

例えば、出生時に女性と割り当てられ、自分自身のことを女性だと認識している人はシスジェンダー女性です。同様に、出生時に男性と割り当てられ、自分自身のことを男性だと認識している人はシスジェンダー男性です。

なぜシスジェンダーという言葉があるのか

「シスジェンダー」という言葉は、「トランスジェンダー(Transgender)」という言葉が広く使われるようになったことと関連があります。トランスジェンダーとは、出生時に割り当てられた性別と性自認が一致しない状態を指します。

トランスジェンダーという言葉ができたことで、出生時に割り当てられた性別と性自認が一致する状態にある人たちを指す言葉として、その対義語として「シスジェンダー」という言葉が使われるようになりました。化学の分野で、同じ分子式でも空間構造が異なる物質を区別するために「シス型」と「トランス型」という接頭辞が使われることになぞらえたと言われています。

多くの人々は、出生時に割り当てられた性別と性自認が一致しているため、自分自身を「シスジェンダーである」と特に意識することなく過ごしているかもしれません。しかし、多様な性のあり方を理解する上で、この「シスジェンダー」という言葉を知ることが大切なのです。

シスジェンダーという言葉を知る意義

シスジェンダーという言葉を知ることは、私たちにいくつかの重要な視点をもたらしてくれます。

1. ジェンダーが多様であることを認識する第一歩

「男性」と「女性」という二分法だけでは捉えきれないジェンダーのあり方が存在することを理解する上で、シスジェンダーという言葉は役立ちます。トランスジェンダーをはじめとする多様な性自認があることを知ることで、ジェンダーは一人ひとり異なりうるものであると認識できます。

2. 自分自身の性自認を言語化するきっかけ

多くの人にとって、出生時に割り当てられた性別と性自認が一致していることは、空気のように当たり前かもしれません。しかし、「シスジェンダー」という言葉を通して、自分自身の性自認もまた多様なあり方の一つであると認識できます。当たり前だと思っていたことを言語化し、捉え直すことは、他者の多様性を理解する上で重要なプロセスです。

3. マジョリティのあり方を可視化する

シスジェンダーという言葉は、ジェンダーにおいて多数派とされる状態(出生時に割り当てられた性と性自認が一致している状態)をあえて言葉にすることです。これにより、これまで見過ごされがちだった「マジョリティであること」を意識できるようになります。マジョリティが持つ無自覚の特権や、そこから生じるアンコンシャス・バイアスに気づくきっかけにもなりえます。

まとめ

シスジェンダーという言葉は、誰かを区別したりレッテルを貼ったりするためにあるのではなく、ジェンダーの多様性を理解し、私たち自身のあり方を捉え直すためのツールの一つです。この言葉を通して、ジェンダーは多様であり、一人ひとりが自分らしく生きられる社会を目指す上で、様々な性のあり方への理解を深めることの大切さを改めて考えることができるでしょう。